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[VI-16-23] 周期的な住環境変化に対する脳内遺伝子応答の網羅解析
動物は様々な環境変化に対してストレス応答を示す。その結果、ストレッサーの質的・量的な違い等に応じてネガティブな影響(ディストレス)やポジティブな影響(ユーストレス)が身体に生じる。ディストレスの機序は詳細に解明されているが、ユーストレスに関する研究は不足している。動物福祉の観点から重要視されている環境エンリッチメント(EE)はユーストレスモデルとなりうる。しかし従来のEE実験は慢性的な馴化後の状態を解析しており、好ましい環境変化に対する生体応答が減弱している可能性がある。そこで本研究では、1週間のうち土日2日間のみにEE処理を毎週行う「週末EE」でマウスを飼育し、周期的に与えられる好ましい環境に対する情動行動・脳内遺伝子発現変化の解析を行った。またEEの種類による影響の違いを解析するため、動物の不安・うつ様行動を減少させる快適EEと、逆に増加させる不快EEを用いた(快適週末EE・不快週末EE)。快適・不快週末EEともに、オープンフィールド試験の中央移動距離割合やホールボード試験の穴覗き行動の増加が見られた。海馬と扁桃体におけるmRNA-seqを行った結果、快適週末EEマウスの海馬における認知・神経調節遺伝子発現の変動が見られたが、不快週末EEでは別経路の変動が見られた。以上より、周期的な住環境変化やその質の違いにより抗不安様効果や神経機能の変化が見られることが示唆された。