日本畜産学会第131回大会

講演情報

口頭発表

1. 栄養・飼養

栄養・飼養Ⅰ

2023年9月20日(水) 09:00 〜 11:50 第II会場 (大講義室)

座長:大坂 郁夫(明治飼糧株式会社)、谷川 珠子(道総研酪農試)、杉野 利久(広島大院統合生命)、野中 最子、近藤 誠(三重大学)

11:00 〜 11:10

[II-20-13] 妊娠期の栄養環境がウシ胎仔の胸最長筋におけるDNAメチル化に及ぼす影響

*西野 大地1、室谷 進2、後藤 貴文3 (1. 九大院生資環、2. 農研機構、3. 北大院環境科学)

【目的】ウシ胎仔期の栄養環境は、出生時のみならず、その後の表現型にも長期的に影響する。これらの変化は、エピジェネティクスの関与が考えられるが、その制御機構は未解明である。本研究では、胎仔期のエピジェネティクス制御機構の解明を目的とした基盤研究として、異なる栄養条件で飼養した表現型の異なる胎仔の胸最長筋におけるDNAメチル化と遺伝子発現の統合解析を試みた。【方法】妊娠後の黒毛和種を低栄養区(LN; 栄養要求量の60%)と高栄養区(HN; 栄養要求量の120%)に分け、妊娠8.5ヵ月時に胎仔を摘出、屠畜した。胸最長筋を採取し、全ゲノムバイサルファイトシーケンスによるDNAメチル化解析と、マイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。【結果】全ゲノムを1,014,523領域に区分し、メチル化状態を比較解析した結果、HNにおいて659個の高メチル化領域、509個の低メチル化領域が認められた(|メチル化率の差|>25、q<0.01)。また、DNAメチル化と遺伝子発現の統合解析の結果、HNにおいて8遺伝子が低メチル化・高発現、11遺伝子が高メチル化・低発現を示した。これらの遺伝子は胎仔期の栄養によりエピジェネティックに制御された可能性がある。先行研究では、筋線維の数や構成が2区間で有意に異なることが示された。今後は、候補遺伝子群が骨格筋形成に及ぼすエピジェネティックな影響を解明する。