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[III-20-32] メタゲノム解析によるヒツジのルーメンウイルスの特徴の解明
【目的】反芻動物の第一胃(ルーメン)には様々な微生物が棲息している。近年、ルーメン細菌叢の解析が広く行われているが、原核生物に感染するウイルスにまで着目した研究は少ない。そこで、本研究ではメタゲノム解析によりヒツジのルーメンウイルスの特徴解明を試みた。【方法】粗飼料と濃厚飼料を乾物比30:70 (n=2)および70:30 (n=2)で14日間給与された去勢緬羊4頭よりルーメン液を採取した。各サンプルより、ウイルス画分を精製後、DNAを抽出し、HiseqX (2×150bp)を用いてメタゲノム解析を行った。シーケンスデータよりウイルスゲノムを取得し、遺伝子共有ネットワークに基づく系統分類およびCRISPRスペーサー配列の比較による感染宿主予測を行った。【結果】非冗長な4658ウイルスゲノムを取得し、その中の563ウイルスゲノムの宿主予測に成功した。その結果、ルーメン内に棲息するFirmicutes門、Bacteroidetes門およびProteobacteria門の細菌へ感染するウイルスが多いことが示唆された。また、系統分類の結果、RefSeqやウシのルーメンウイルスゲノム(Sato et al., 2022)に含まれない新規の122属を含むことが明らかになった。以上より、ヒツジのルーメンには土壌や海洋などの他の環境中やウシのルーメンとは異なるウイルスが棲息している可能性が示唆された。