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[V-20-03] 野生由来ウズラ系統の作出
日本で家畜化されたウズラ(Coturnix japonica)は、卵肉生産に貢献している。野生原種のウズラは北海道では繁殖のため飛来する夏鳥であり、IUCNのレッドリストで準絶滅危惧に指定されている。渡りを行う野生原種集団と比較して、家畜ウズラ集団には、家畜化に関わる遺伝学的違いがあると想定されるが、その全容は不明である。本研究では、フィールド調査およびラボ内の研究を組み合わせることで、野生由来ウズラ系統を作出することを目的とした。環境省北海道地方環境事務所より野生ウズラの捕獲許可を得て、2018年から2022年までフィールド調査を行い、十勝地方の牧草地等で野生ウズラの捕獲を試みた。2021年以降に一時飼育許可を得て、野生捕獲個体と家畜ウズラ(Dom)系統との交配を試みた。捕獲個体は全て放鳥した。その結果、2021年には、捕獲の野生雄2個体を一時飼育し、Dom系統の雌5個体との交配によって次世代(W50系統)を生み出した。2022年には、捕獲の野生雄2個体を一時飼育し、W50系統4個体の雌との交配によって次世代(W75系統)を生み出した。W50およびW75の野生由来ウズラ系統は、Dom系統由来の遺伝情報をもつものの、野生ウズラ集団の遺伝情報を多く引き継いでいることから、ユニークな遺伝資源である。今後、この遺伝資源を活用して、家畜化の歴史や量的形質の遺伝的基盤を解明したい。