育種・遺伝Ⅰ

[V-20-09] 大規模SNPジェノタイピングによる国内エミュー集団の遺伝的組成

*輿石 雄一¹、大久保 倫子²、平山 博樹²、相馬 幸作²、和田 健太² (1. 東京農大ゲノム解析センター、2. 東京農業大学生物産業学部)

エミューは新規の家禽として期待されるが、国内の飼育集団は近交化の傾向にある。我々は、マイクロサテライトおよびミトコンドリアDNA（mtDNA）多型に基づき、国内集団のうち、東北サファリパーク（東北）および富士/掛川花鳥園（花鳥園）は、それぞれ網走の集団と遺伝的組成が異なることを示唆してきた。しかし、これは限られた遺伝子座において評価された結果であった。本研究は、国内集団の遺伝的多様性の維持・拡大に有用な遺伝資源の探索として、RAD-seqを用いた大規模SNP解析を実施した。その結果、我々は計253個体から28,676か所のSNPsを検出した。Admixture解析は、花鳥園が独自のクラスターを占有した一方で、東北の主要なクラスターは網走の一部と共通であった。また、F_STに基づく系統樹は、花鳥園が他の集団から大きく分岐した一方で、東北および網走は同一のクラスターに含まれた。これらの結果は、東北の始祖集団は網走と共通であり、花鳥園はこれらと異なる祖先集団から構成されることを示唆した。以前のmtDNA解析は、花鳥園がオーストラリア東部の隔離野生集団と共通するハプロタイプ構成であることを明らかにした。したがって、花鳥園の起源はオーストラリア東部の隔離野生集団であることが示唆された。これらの結果は、花鳥園が国内エミュー集団にとどまらず、野生集団においても重要な遺伝資源となることを示した。