日本畜産学会第131回大会

講演情報

口頭発表

2. 育種・遺伝

育種・遺伝Ⅰ

2023年9月20日(水) 09:00 〜 11:50 第V会場 (4番講義室)

座長:和田 健太(東京農業大学)、石原 慎矢(日本獣医生命科学大学)、石川 明(名大院生命農)、鈴木 恒平(家畜改良セ)、谷口 雅章(農研機構畜産研)、福田 智一(岩手大理工)

10:30 〜 10:40

[V-20-10] カザフスタンのラクダ交雑に関する研究(続報)

*川本 芳1、今村 薫2、斎藤 成也3、西堀 正英4、Gaukhar Konuspayeva5、Sabir Nurtazin5 (1. 日獣生科大獣、2. 名学院大現代社会、3. 国立遺伝研ゲノム・進化、4. 広島大院統合生命、5. Al-Farabi Kazakh National Univ.)

カザフスタンではヒトコブラクダ(Camelus dromedarius)とフタコブラクダ(C. bactrianus)の分布が重なり, それらの交雑個体が使用されていることを前回の発表で報告した(Kawamoto et al. 2021)。両家畜種の交雑現状に関する調査は乏しく、コブを代表とする形態的な識別とは別に、ゲノムから個体の交雑程度を定量し、畜産の状況を調べる研究は遅れている。前回開発した種判別用SNP(一塩基多型)を同時判定する交雑度測定法を未調査地に応用し、2015年に今村と斎藤によりカザフスタン国内3地域(Aral, Shalkar, Aktobe)で採取されていた22試料を新たに分析した。得られた結果から、(1)交雑度の地域差、(2)交雑度とコブ形態の関係、(3)交雑度と呼称の関係について検討した。前回の調査結果も含めて比較すると、カザフスタンのラクダ集団の平均交雑度には地域差が認められた。写真記録との照合から、コブには交雑度に応じた数や形状の変化が認められた。また、コブとも関係のある呼称の区別から、飼養者たちの家畜識別はある程度交雑度と相関するものの、個体により対応しない例もあることが判明した。この研究から、中央アジアにおける家畜ラクダの交雑利用の実態を理解するのに、開発した分析を利用した集団調査が有効であることが裏付けられた。