日本畜産学会第131回大会

講演情報

口頭発表

2. 育種・遺伝

育種・遺伝Ⅰ

2023年9月20日(水) 09:00 〜 11:50 第V会場 (4番講義室)

座長:和田 健太(東京農業大学)、石原 慎矢(日本獣医生命科学大学)、石川 明(名大院生命農)、鈴木 恒平(家畜改良セ)、谷口 雅章(農研機構畜産研)、福田 智一(岩手大理工)

11:20 〜 11:30

[V-20-15] 黒毛和種雌牛に見いだされたミオスタチン遺伝子の変異ヘテロ個体

*久保 玲奈1、Nu Anh Thu Le2、陸 拾七1、揖斐 隆之3、佐々木 慎二4 (1. 岡山理大獣、2. フエ大学、3. 岡山大院環境生命、4. 琉球大農)

【目的】ミオスタチン(MSTN)遺伝子は筋肉の発達を負に制御する遺伝子であり、その突然変異は各種動物で骨格筋の過形成を引き起こす。ウシではベルジアンブルー種等の多くの品種で各種のMSTNの突然変異が報告されている。これまで黒毛和種ではMSTNの突然変異の報告はないが、過去に「豚尻」と呼ばれる筋過形成様の形質の発生が知られていることから、黒毛和種の集団中にもMSTNの変異が存在している可能性があり、本研究では変異を持つ個体と変異の種類を特定することを試みた。【方法】ウシの集団において最も一般的に報告されている11塩基の欠失を検出するプライマーを用いたアンプリコンシーケンスにより変異個体が存在する集団を特定し、次にその集団の全頭を対象としてMSTNの塩基配列を解析した。【結果】スクリーニングの結果、100個体中1個体がMSTNの11塩基欠失のヘテロであることが判明した。当該個体の血縁個体の解析を行ったところ、この変異は母系に由来していることが確認され、黒毛和種の繁殖雌牛の集団には一定の頻度でこの変異が存在している可能性が考えられた。11塩基の欠失はデボン種などの黒毛和種の成立に寄与した外国品種にも存在していることから、これら外国品種に由来している可能性が考えられた。今後、MSTNの変異が黒毛和種の各種生産形質に与える影響について慎重に検討することが必要と考えられる。