日本畜産学会第131回大会

講演情報

口頭発表

2. 育種・遺伝

育種・遺伝Ⅱ

2023年9月20日(水) 09:00 〜 11:40 第VI会場 (5番講義室)

座長:増田 豊(酪農大農食環境)、岡村 俊宏(農研機構畜産部門)、山崎 武志(農研機構北農研)、大澤 剛史(家畜改良セ)、阿部 隼人(北酪検)、舘林 亮輝(農研機構畜産部門)

10:10 〜 10:20

[VI-20-08] 乳牛における診療情報を用いた疾病形質のゲノミック評価精度

*馬場 俊見1、後藤 裕作1、川上 純平1、岡 太郎2、河原 孝吉1 (1. 日ホ北支局、2. 日ホ協会)

【目的】耐病性の選抜を効率的に行うには、疾病形質の育種価を正確に推定する必要がある。本研究では、シングルステップのBLUP(SS法)によるゲノミック評価精度を検証した。【方法】分析には5道県の農業共済組合から提供を受けた診療情報を基に編集した、2004から2022年に分娩した初産から5産の記録を用いた。第四胃変位や乳房炎を含む8つの疾病形質を対象に、SS法と血縁情報に基づくBLUP(従来法)による評価精度を交差検証で比較した。交差検証には、上記データ(完全データ)と2015年でデータカットした切断データを用いた。SNPデータには、2015年以前に誕生した雄牛および切断データに記録をもつ雌牛から成る1.1から1.3万頭の記録を利用した。予測個体は切断データに記録をもつ娘牛が存在せず、かつ完全データに記録をもつ娘牛を有する国内種雄牛609頭であった。【結果】完全および切断データに従来法を適用し推定した育種価間の相関は0.04から0.64の範囲にあったのに対し、SS法で得られたそれらの相関は0.54から0.87まで向上した。また、完全データを用いて推定した育種価に対する切断データ由来の育種価の傾きは、いずれの形質でもSS法を用いたときにより1に近似した。疾病形質の遺伝率は低いが、ゲノミック評価を用いることでより正確に育種価を推定できる可能性が示された。