日本畜産学会第131回大会

講演情報

口頭発表

4. 形態・生理

形態・生理

2023年9月20日(水) 13:00 〜 16:20 第VII会場 (21・22番講義室)

座長:辰巳 隆一(九大院農)、岩崎 智仁(酪農大食と健康)、佐藤 幹(東北大)、磯部 直樹(広大院生物圏)、室谷 進(農研機構畜産部門)

13:10 〜 13:20

[VII-20-18] ブロイラー異常硬化胸肉発現と胸肉内血管分布の関係

*長谷川 靖洋1、川崎 武志2、細谷 実里奈3、渡邉 敬文3、山田 未知1、前田 尚之1、岩﨑 智仁1 (1. 酪農大農食環境、2. 人と鳥の健康研究所、3. 酪農大獣医)

【目的】我々はブロイラー異常硬化胸肉(以下,WB)発現には異常な成長スピードが関係し,胸肉の急速な発達に対して血管網の形成が追いつかず,筋肉内で虚血を引き起こしていると仮説立て研究を展開している.本研究では医療用CTおよび組織化学的観察手法を用いてブロイラー胸肉内の血管分布について検討した. 【方法】本学で飼育したRoss308系ブロイラーを翼の挙上試験によるWB発現の確認を行い,WB発現およびWB非発現の個体を医療用CTで胸肉内の血管走行を可視化した後,6ヶ所から筋組織を採材してその形態を観察した.さらに,36羽に対してWB重症度の分類を行い,血管系の観察および各種遺伝子発現量を調査した. 【結果】CT撮像の結果,WBを発現している個体は胸肉の腹側頭側部に走行する胸鎖動脈が末梢まで可視化できなかった.これら個体の筋組織をHE染色で形態を観察したところ,胸鎖動脈の末梢部では,筋線維の円形化が進行していた.組織化学的手法を用いて腹側頭側部の毛細血管および細動脈を観察すると,いずれの血管系も重症の高い群で多く観察された.低酸素誘導因子および血管内皮細胞増殖因子の遺伝子発現量は重症度間で差異は認められなかったが,これらの遺伝子間は重症群で有意な正の相関が認められた.以上のことから,WBが重症化すると筋組織内で低酸素状態になるが,血管新生により新たに血管枝を形成している可能性が示唆された.