日本畜産学会第131回大会

講演情報

口頭発表

4. 形態・生理

形態・生理

2023年9月20日(水) 13:00 〜 16:20 第VII会場 (21・22番講義室)

座長:辰巳 隆一(九大院農)、岩崎 智仁(酪農大食と健康)、佐藤 幹(東北大)、磯部 直樹(広大院生物圏)、室谷 進(農研機構畜産部門)

14:20 〜 14:30

[VII-20-25] 鳥類の母子免疫と血中IgY動態を制御するホスホリパーゼA2受容体の組織発現分布

*岡本 真由子1、佐々木 諒1、村井 篤嗣1 (1. 名大院生命農)

[目的]母ドリの血中IgY抗体が次世代ヒナへ伝播する現象は母子免疫と呼ばれ、このIgY輸送を担う鍵分子としてホスホリパーゼA2受容体(PLA2R)に着目した。PLA2Rの機能解析を進める過程で、PLA2Rが母子免疫だけでなく血中IgYの延命化にも寄与する可能性が示唆された。本研究では、母ドリの各組織におけるPLA2Rの発現分布を調査した。
[方法]ウサギ抗PLA2R抗体を作出し、これを用いて免疫組織化学染色法によって産卵鶏の各組織におけるPLA2Rの発現分布を解析した。さらに、血管内皮細胞マーカーQH1およびマクロファージマーカーKUL01を用いて、卵巣の血管内皮細胞および脾臓のマクロファージとPLA2Rとの共局在を解析した。
[結果]産卵鶏の肝臓、脾臓、腎臓、腸管リンパ節、卵胞でPLA2Rを発現する細胞が観察された。特に卵巣では、基底膜付近の卵胞膜内層でPLA2Rの強い陽性反応が確認された。この陽性反応はQH1の陽性反応と部分的に重複し、PLA2Rが卵胞の血管内皮細胞で発現すると判断された。また、脾臓でPLA2Rを発現する細胞の大部分はKUL01にも陽性であり、マクロファージにPLA2Rが発現することが判明した。
[結論]PLA2Rが産卵鶏の様々な組織で発現していることが明らかとなり、これらのPLA2Rが母子免疫や血中IgYの延命化など多彩な機能を担う可能性が示された。