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[VII-20-35] 生後直後に摂取した乳が新生子豚の脂質代謝に与える影響
【目的】我々はこれまでに非妊娠豚に人為的に泌乳を誘起する手法を世界で初めて報告し、泌乳開始直後の乳(誘起初乳)には初乳と同等のIgGや栄養成分が含まれることを明らかにした。本研究では生後直後に摂取した誘起初乳が豚の脂質代謝に与える影響を解析し、誘起初乳の代用初乳としての有効性を評価した。【方法】新生子豚20頭を分娩直後に母豚から隔離し、初乳、誘起初乳(泌乳開始後24~48時間の乳)、誘起常乳(泌乳開始後96~120時間の乳)のいずれかを計200 mL摂取あるいは何も摂取させない4群に分類した。血液は6時間間隔で採血し、生後24時間には肝臓を採取し、脂質代謝に関わる遺伝子発現量を評価した。【結果】血中トリグリセリドはいずれかの乳摂取群で生後6時間に一過性に上昇し、誘起常乳摂取群のみ24時間まで高値で推移した。一方、誘起常乳摂取群と未摂取群で経時的に総コレステロールは上昇し、肝臓においてこれらの脂質の生合成に関わるいくつかの遺伝子の発現量が上昇していた。一方、誘起初乳群ではいずれも初乳群に近い値を示した。【考察】誘起常乳は低乳糖、高脂肪という点で初乳および誘起初乳と異なるため、誘起常乳群ではエネルギー源の脂肪への依存度が高くなることで未摂取群と同様の代謝変化が生じたと考えられた。栄養学的観点から、誘起初乳は初乳の代替として遜色ない機能を持つが、誘起常乳は機能が劣ることが明らかとなった。