日本畜産学会第131回大会

講演情報

口頭発表

5. 畜産物利用

畜産物利用

2023年9月20日(水) 09:00 〜 11:50 第XI会場 (35番講義室)

座長:佐々木 啓介(農研機構畜産研究部門)、若松 純一(北海道大学)、今成 麻衣(農研機構九州沖縄農業研究センター)、上田 修司(神戸大学大学院農学研究科)、前田 尚之(酪農学園大学)

09:10 〜 09:20

[XI-20-02] 質量分析を用いた黒毛和種牛肉の原産地国判

*上田 修司1、後藤 祐之介2、高嶋 康晴2、鈴木 武志1、北村 千晶1、福田 伊津子1、白井 康仁1 (1. 神戸大農、2. 農林水産消費安全技術センター)

【目的】 黒毛和種は、その香りや霜降りが注目され、世界的に取り扱いが増えている。本研究では、黒毛和種に由来する和牛の原産地国に着目し、質量分析を用いた栄養成分と元素分析から産地国の判別を検討した。
【方法】 牛肉試料は、日本産黒毛和種、肉専用牛、オーストラリア産Wagyuを用いた。牛肉に含まれる脂質は、高速液体クロマトグラフィーで分析した。各種元素は、誘導結合プラズマ質量分析および誘導結合プラズマ発光分光分析装置を用いて分析した。アミノ酸、有機酸などは、ガスクロマトグラフィー質量分析で解析した。
【結果】 牛肉の胸最長筋に含まれるトリアシルグリセリドを比較したところ、日本産黒毛和種は、海外産Wagyuに比べ、トリオレイン(C18:1/C18:1/C18:1)とC18:1/C18:1/C16:1が有意に高かった。元素を比較した結果、オーストラリア産Wagyuは、日本産に比べ、ルビジウム、セシウム、リチウムの濃度が有意に高かった。一方、日本産黒毛和種は、カドミウムが有意に高かった。アミノ酸、有機酸の比較では日本産黒毛和種とオーストラリア産Wagyuの間で、アミノ酸や有機酸の濃度に有意な差があることが確認された。これらの結果は、質量分析による黒毛和種の生産地国判別の可能性を示唆するものである。