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[XIYS-19-05] 個体加齢が受精時の卵管機能に与える影響の解析
【目的】個体の加齢に伴うメスの繁殖能力低下を防ぐことは、家畜生産や不妊治療分野の重要課題である。本研究ではマウスをモデルとして、加齢に伴う繁殖能力低下機構を卵管に焦点を当てた。また、組織・臓器の老化に関与の知られるセネッセンス細胞(細胞老化に至った細胞)の存在を解析した。【方法】2-4ヶ月齢マウスを「若齢」、8-10ヶ月齢を初期老化モデル(以下、「前老齢」)とした。各月齢期間内での産子数及び、過排卵処理により排卵数を、体外受精により受精率・初期胚発生率を、また卵管内に精子を直接注入した際の受精率を調べた。オスと交配後に卵管膨大部内の精子を計数し、さらに生体内での受精・発生率を調べた。セネッセンス細胞の存在をその指標(CDKN2A発現、SA-βGal染色)により解析した。【結果・考察】若齢・前老齢間で、排卵数、体外受精率・発生率に顕著な差はなかったが、生体内での受精率及び産子数は前老齢で有意に低下した。同数の精子を卵管内へ注入した際の受精率は若齢・前老齢間で有意差はなかった。前老齢個体では、若齢と比べて多くの精子が交配後の早期に卵管膨大部へ到達した。前老齢卵管の膨大部ではCDKN2Aが高発現し、上皮細胞がSA-βGal染色陽性を示した。以上より加齢初期での繁殖能力低下の一因として、膨大部への過剰な精子輸送を伴う受精率低下が考えられ、それにはセネッセンス細胞が関与する可能性がある。