15:00 〜 17:00
[BS1] DVの再考
「育ち」という視点から
臨床発達心理士資格更新ポイントの対象となります。
※本シンポジウムの参加者は学校心理士または臨床発達心理士の資格更新ポイントを取得できる予定です。ただし,両者の資格更新ポイントを同時に取得することはできません。学校心理士資格に関しては,更新 A ポイントとなります。更新 A ポイントの取得をご希望の方は,シンポジウム入場の際に入口にて引換証をお受け取りいただき,シンポジウム終了時にお持ちください。また,シンポジウム開始時刻を越えた時点で入場される場合はポイントを取得できませんのでご注意ください。
なお,資格更新ポイントに関する問い合わせは,主催校には行わないでください。
[企画主旨]発達心理学を考究する私たちには,何らかの生きづらさを抱える人々をいかに支えるかという実践的な関心がある。その中で,昨今,社会問題化しているとも言える DV について,社会学,精神保健の分野からのアプローチに比べても,考察が少ないように思われる。
DV は家庭内において家族を巻き込んで生起する。そして,決して肯定的な事象ではないため,周囲から見えづらく外に開かれにくい。その一方,現代社会が生み出した病理と言われるように,私たちが生きている社会のあり方,私たちが有している共同主観的な価値-とりわけ性別役割の枠組み-と切り離せない問題であるという側面も持ち合わせている。
では,当事者にとって,それはどのような体験なのか。一足飛びに問題解決の方策を考えるというよりも,まずは DV 当事者の臨床に携わる方の実感をとおして,当事者の体験の一端に触れ,DV 当事者への理解を深め,今後の支援に活かしていくことが本シンポジウムの目的である。
話題提供をしていただくお2人は DV 臨床の実践に携わるなかで,DV が孕む多様な面について考えてこられた。DV 当事者をより深く理解しようと思いをめぐらせていくと,男性,女性,家族,親,子どもといった様々な生を生きるものとしての「育ち」,に関する視点が浮かび上がってくる。
まず考えたいことは,人が男性・女性として育ちゆく社会化の過程に暴力がどのようなものとして入り込んでくるのかという点である。また,その後それぞれが生きてきた背景を持ち寄って構成される夫婦,家族という単位の中での力関係や,対人暴力が生成する関係性についても考えたい。さらに,DV のある家庭に子どもがいる場合,子どもの育ちにとって,両親の関係性、家族がどのように社会とつながっているのかなど,家族としての育ちが大きく影響するであろうことは想像に難くない。親のあり様と変容を,そこで育つ子どもの育ちと関連させて考えることは,虐待などの問題を考えるうえでも,重要な意味を持つだろう。
以上のような「育ち」を基軸に DV を考えることで,夫婦を加害者と被害者に分け,一方的に加害男性を断罪し厚生させるといった,従来の矯正的な思想にとどまらない,新たな理解につなげてゆくことができるのではないだろうか。様々な体験を通し,人はどのような「私」になって人に社会に開かれていくのか,また未来を見通し,新たな一歩を踏み出すのか。当事者と,そうでない人が分断されない問題意識のもと,発達心理学がいかに DV にアプローチし,その人の生に貢献していくことができるのかについて考え合いたい。
DV は家庭内において家族を巻き込んで生起する。そして,決して肯定的な事象ではないため,周囲から見えづらく外に開かれにくい。その一方,現代社会が生み出した病理と言われるように,私たちが生きている社会のあり方,私たちが有している共同主観的な価値-とりわけ性別役割の枠組み-と切り離せない問題であるという側面も持ち合わせている。
では,当事者にとって,それはどのような体験なのか。一足飛びに問題解決の方策を考えるというよりも,まずは DV 当事者の臨床に携わる方の実感をとおして,当事者の体験の一端に触れ,DV 当事者への理解を深め,今後の支援に活かしていくことが本シンポジウムの目的である。
話題提供をしていただくお2人は DV 臨床の実践に携わるなかで,DV が孕む多様な面について考えてこられた。DV 当事者をより深く理解しようと思いをめぐらせていくと,男性,女性,家族,親,子どもといった様々な生を生きるものとしての「育ち」,に関する視点が浮かび上がってくる。
まず考えたいことは,人が男性・女性として育ちゆく社会化の過程に暴力がどのようなものとして入り込んでくるのかという点である。また,その後それぞれが生きてきた背景を持ち寄って構成される夫婦,家族という単位の中での力関係や,対人暴力が生成する関係性についても考えたい。さらに,DV のある家庭に子どもがいる場合,子どもの育ちにとって,両親の関係性、家族がどのように社会とつながっているのかなど,家族としての育ちが大きく影響するであろうことは想像に難くない。親のあり様と変容を,そこで育つ子どもの育ちと関連させて考えることは,虐待などの問題を考えるうえでも,重要な意味を持つだろう。
以上のような「育ち」を基軸に DV を考えることで,夫婦を加害者と被害者に分け,一方的に加害男性を断罪し厚生させるといった,従来の矯正的な思想にとどまらない,新たな理解につなげてゆくことができるのではないだろうか。様々な体験を通し,人はどのような「私」になって人に社会に開かれていくのか,また未来を見通し,新たな一歩を踏み出すのか。当事者と,そうでない人が分断されない問題意識のもと,発達心理学がいかに DV にアプローチし,その人の生に貢献していくことができるのかについて考え合いたい。
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