第42回日本磁気共鳴医学会大会

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教育講演

基礎

教育講演3

基礎1

Thu. Sep 18, 2014 8:30 AM - 9:30 AM 第3会場 (3F 源氏の間南)

座長:尾藤良孝(株式会社日立メディコ MRIシステム本部)

[EL3-1] 中枢神経における非ガウス拡散を含む様々な拡散モデル解析

堀正明 (順天堂大学医学部 放射線医学講座)

拡散強調像とは,通常拡散強調のための傾斜磁場(motion probing gradient,以下MPG)を印加した,(通常は水分子の)拡散運動を強調した画像のことである.現在に至るまで,様々な撮像法が提案されてきたが,現時点で最も臨床応用されている手法は,single shot EPIである.
拡張強調像では,通常のMRIの撮像条件の他に,b値(MPGの影響の強さ,通常はs/mm2),MPGの数と方向,拡散時間といった要素が重要となる.また,定量値としては,拡散の程度を示す,みかけの拡散係数(apparent diffusion coefficient,以下ADC)やMPGが6軸以上用いたデータから算出可能な,拡散の異方性を示すfractional anisotropy (以下,FA)といったものがよく用いられる.
しかしこれらは,あくまでも「水分子はガウス分布拡散をする」という前提のもとで,計算されている.イメージとしては,全く何も障壁のない空間を広がっていくようなものである.しかし,実際の生体においては,細胞そのものや細胞内小器官等,様々なものが障壁として存在し,制限拡散となっている.
従って,実際の生体の構造をより反映した撮像・解析手法として,bi-exponentialモデルに代表するような,異なる複数のガウス分布からなるモデルや,モデルを前提としないq-space imaging(以下,QSI)や,非ガウス分布を前提としたdiffusional kurtosis imaging(以下,DKI)といった手法が提案され,既に臨床応用されている.QSIから得られる根二乗平均変位やDKIから得られるmean kurtosisといった定量値は,ADCやFAといった従来のものとは異なる情報を含有し,かつ場合によってはこれらより病変の検出能等で優れていることが報告されている.
その他,特に脳や脊髄では,特定の構造を想定してモデル化するような手法も複数提唱されている.AxCaliber等その多くは現時点で,撮像時間や撮像装置の制約から臨床的に困難なものが多いが,NODDI(neurite orientation dispersion and density imaging)のように既に臨床応用されているものも存在する.本講演では,拡散強調像の基本から,中枢神経系における現状での様々な撮像,解析手法とその臨床応用に関して紹介する.