第42回日本磁気共鳴医学会大会

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脳神経2

2014年9月19日(金) 08:30 〜 09:30 第2会場 (3F 源氏の間東)

座長:三木幸雄(大阪市立大学大学院医学研究科 放射線医学教室)

[EL7-1] 下垂体・傍鞍部疾患の画像診断:MRIを中心に

三木幸雄 (大阪市立大学大学院医学研究科 放射線診断学・IVR学教室)

 下垂体・傍鞍部には様々な構造物があるため、多様な疾患が発生しうる。この部位の画像診断の主たるモダリティはMRIであるが、下垂体・傍鞍部MRIの重要な研究の多くが日本から発表され、日本が世界をリードしてきた分野であるといえる。本講演では、下垂体・傍鞍部疾患のMRIを中心に述べる。
 下垂体は矢状断T1強調画像で観察するのが基本である。正常下垂体は、成人女性は男性より若干サイズが大きく、男女とも個人差が大きい。思春期・周産期・更年期などで肥大する。前葉は通常は脳とほぼ等信号であるが、新生児期や周産期では機能亢進を反映して高信号を呈する。一方、後葉は正常で高信号を呈し、尿崩症などでこの高信号が消失する。Dynamic MRIでは、前葉は血流を下垂体門脈から受けることを反映して、後葉よりも遅れて上部から造影領域が広がる。
 海綿静脈洞は、下垂体の両側および下面を覆う静脈構造であり、下垂体ホルモンの受け皿になっている。動眼神経・滑車神経・三叉神経第一枝・第二枝・外転神経が通るが、造影高分解能T2強調画像などで良く観察できる。Liliequist膜は、鞍背と乳頭体の間にあるくも膜構造であり、高分解能T2強調画像にて描出可能である。
 下垂体・傍鞍部領域の腫瘍(腫瘤)性病変には、下垂体腺腫・ラトケ嚢胞・頭蓋咽頭腫・胚種・視床下部過誤腫・髄膜腫・神経膠腫・下垂体細胞腫・顆粒細胞腫などがあげられる。下垂体腺腫は、下垂体前葉に発生する良性腫瘍である。T1強調像・T2強調像ともに信号強度は様々である。Dynamic MRIを用いると、微小腺腫を高率に検出でき、腺腫に圧排された正常下垂体も良く観察できる。他の腫瘤性病変のMRI像も述べる。
 非腫瘍性病変には、リンパ球性下垂体炎・ランゲルハンス細胞組織球症・下垂体性小人症・トローザハント症候群・頚動脈海綿静脈洞瘻・動脈瘤・サルコイドーシス・視神経脊髄炎などがある。これらの疾患の診断のMRI像も述べる。