第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

教育講演

泌尿生殖器

教育講演9

泌尿生殖器

2014年9月19日(金) 08:30 〜 09:30 第4会場 (3F 源氏の間北)

座長:渡邊祐司(九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野 分子イメージング診断学講座)

[EL9-2] 腎・尿路腫瘍の診断におけるMRIの活用

陣崎雅弘 (慶應義塾大学医学部 放射線診断科)

腎・尿路の評価においてMDCTは第一選択として用いられる検査であるが、MRは必ずしもルーチンに用いられる検査ではない。しかし、適切に用いることこの領域の診断や病期診断において大変有用な情報を提供する。
腎腫瘍の評価においては、腎細胞癌と良性腫瘍(脂肪に乏しい血管筋脂肪腫、平滑筋腫、後腎性腺腫)との鑑別が非常に重要である。これらの良性腫瘍はT2強調像で低信号、単純CTで高濃度を呈し、均一な増強効果を呈する傾向がある。近年、潜在的悪性の類上皮型血管筋脂肪腫、嚢胞成分を持つAML with epitelial cyst (AMLEC)といった血管筋脂肪腫の亜型が存在することが明らかになってきたが、これらの亜型も平滑筋成分に富み脂肪が少ないため、T2強調像で低信号、単純CTで高濃度を呈する傾向があり、この所見は腎腫瘍の診断において重要な手掛かりと言える。腎腫瘍の診断におけるもう1つの大きな課題は、後天性多発嚢胞腎に合併する腎細胞癌と出血性嚢胞の鑑別診断である。後天性多発嚢胞腎に合併する腎細胞癌は、T2強調像で不均一な高信号、拡散強調像では拡散低下部が不均一に見られる傾向があり、鑑別の手掛かりになる。
尿路の評価においては、T2強調像と拡散強調像が診断の重要な手掛かりになる。ほとんどの尿路上皮癌はT2強調像で尿管壁に比較して等―高信号を呈し、拡散強調像で拡散の低下を認めるのに対し、線維上皮性ポリープやアミロイドーシスのような良性腫瘍はT2強調像で低信号を呈し、拡散の低下は見られないことが多い。従って、T2強調像低信号で拡散低下が見られない場合は、良性を示唆すると思われ、不要な腎盂尿管摘出を防げる。また、拡散強調像は腎盂癌や膀胱癌において深達度診断や細胞異型の予測において有効である。
以上のように、T2強調像と拡散強調像を適切に用いることで腎・尿路の鑑別診断や病期診断に貢献できる。