[O-1-096] Pulsed continuous arterial spin labeling MRIを用いた腎動脈到達時間と動脈到達時間補正腎血流量の測定
【目的】multiple post-labeling delay (PLD:ラベル後待ち時間) 撮影を併用したpulsed continuous arterial spin labeling MRI(pcASL)を用いて、動脈到達時間(Arterial transit time:ATT)および動脈到達時間補正腎血流量(ATT-corrected renal blood flow:ATC-RBF)を測定し、その妥当性を腎シンチグラフィーから得られた有効腎血漿流量(Effective renal plasma flow:ERPF)と比較検討し、ATC-RBFの妥当性の評価を目的とした。【方法】14名の男性健常志願者を若年群8名(平均27歳)、高齢群6名(平均64.8歳)に分け、同日にMRIと腎シンチグラフィー(99mTc-MAG3)を撮像した。MRIは3.0Tの臨床機を用い、腎中央から10cm頭側で2.0秒間ラベル印加し、0.5秒、1.0秒、1.5秒のPLDを設定し、冠状断での2D-EPIで10スライス撮影した。バックグランドサプレッションを使用し、呼吸停止は撮像に合わせ行った。腎皮質にROIを設定し、シングルコンパートメントモデルを用いて、ATT及びATC-RBFを算出した。ERPFとの比較評価にはATC-RBFに腎体積補正を加えたATC-cRBFを用いた。【成績】14名中13名で撮像と解析は成功した。不成功例は痩身で画像歪曲が高度であった。若年群の平均ATT 961.33±260.87 ms、平均ATC-RBF 157.68±38.37 mL/min/100gに対し、高齢群は平均ATT 1227.94±226.51 ms、平均ATC-RBF 117.42±24.03 mL/min/100gであり、有意に若年群でATTが短く、ATC-RBFが高かった。ATC-cRBFとERPFとの相関は有意に認められた( P<0.005、r=0.47 )。PLDの多点撮影と単点撮影の比較では、PLD 0.5秒と1.0秒の単点では多点撮影と相違はなかったが、PLD1.5秒ではERPFとの有意相関が消失した。【結論】pcASLを用いたATT及びATC-RBFの算出は正常ボランティアにおいて可能であり、ERPFとの相関も有意に認められた。また、健常群においても年齢によるATTの差が認められ、不適切なPLDの設定では定量性が低下した。この点から、動脈到達時間の差がより複雑な患者群に応用する場合には、多点PLD撮影による動脈到達時間補正が必要と考えられた。