第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

肺-基礎

肺-基礎

2014年9月20日(土) 09:40 〜 10:30 第5会場 (3F 源氏の間西)

座長:大野良治(神戸大学大学院医学研究科 先端生体医用画像研究センター)

[O-3-314] 超偏極129Xe MRI/MRSによる脳・肺機能連関に関する研究

山内紬起子1, 松本浩伸1, 奥村慎太郎1, 程野祥太1, 萩原祐1, 細川尚武1, 藤原英明2, 木村敦臣1 (1.大阪大学大学院医学系研究科 保健学専攻, 2.大阪大学 産学連携本部)

【目 的】慢性閉塞性肺疾患(COPD)の併存症の一つである脳機能障害として、鬱病、心配症等を発症することが認知されるようになってきた。脳は酸素低下に非常に敏感な臓器であり、COPDによる肺機能変化が及ぼす脳機能への影響について知見を得ることは、併存症の発症機序を解明し、より良い早期診断や治療法の開発を勧める上で興味深い。そこで、本研究では、超偏極129Xe MRI/MRSの肺・脳擬同時計測によりCOPDにおける肺・脳機能連関の観測と解明を試みた。
【方 法】雄性ddyマウスにタバコ煙薬液(CSS)とリポ多糖(LPS)を6週間繰り返し気管内投与し作成したCOPDモデルマウス12匹、および健常マウス9匹に自作の連続フロー型偏極装置で生成した超偏極Xeガスを自発呼吸下で吸入させながら、MRI/MRSを測定した。磁化移動コントラスト画像(XTC)はbSSFP法を用いて撮像し、肺胞ガス交換率f D(%)評価に用いた。脳のMRS測定は飽和回復法を使用し、溶解相信号の回復動態を観測した。この回復動態から信号減衰定数α (s-1)を算出した。病態群と健常群のα値とfD値とを比較検討することで相関関係を検証した。別途、FAIR法により評価した脳血流量Fi (ml/100g/min)を用いてT1i (s)を算出し、各パラメータとの関連を調べた。
【結 果】COPD モデルマウスにおいて、超偏極129Xe MRI/MRS を用いた測定により、肺胞ガス交換率f Dに依存した脳機能パラメータαの変化を認め、パラメータ間に有意な正の相関(r = 0.86 , ***p <0.001)を観察した。健常群および病態群ともにα値とT1iとの間に有意な負の相関(健常群: r = -0.97, ***p<0.001,病態群: r=-0.99, ***p<0.001)が観測され、健常群ではF iの増加に伴いT1i が延長する一方で、病態群ではT1i が短縮した。
【考 察】 COPD急性期の症状では、酸素要求量が増加しF iが増加するが、f Dは若干低下をきたすため、負のBOLD効果によりT1iが短縮し、一方、慢性期の症状では脳の酸素要求量低下によりF iが正常値付近に戻るが、f Dの大幅な低下により、脳組織は低酸素状態となりT1iは延長すると考えられる。以上から、本手法はCOPD併存症における脳機能疾患の発症機序解明に有用である。