第42回日本磁気共鳴医学会大会

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分子イメージ

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2014年9月20日(土) 10:12 〜 10:36 ポスター会場 (5F ロビー)

座長:川口拓之(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター)

[P-3-219] 磁性粒子を用いた糸球体腎炎モデルマウスの評価

陳挺1,2, 森勇樹1,2, 程振宇1,2, 大野工司3, 多胡善幸4, 吉田慎一4, 吉岡芳親1,2 (1.大阪大学 免疫学フロンティア研究センター(IFReC), 2.(独)情報通信研究機構・大阪大学 脳情報通信融合研究センター(CiNet), 3.京都大学 化学研究所, 4.カネカ バイオテクノロジー開発研究所)

【背景・目的】日本は世界有数の腎不全大国であり、腎炎患者数は年々増加している。しかし、その病因の大半はまだ解明されていない。我々は新規ナノ磁性粒子(ステルス磁性粒子)1)が、正常マウス腎臓において特異的な造影効果を示すことを確認し報告した2)。本研究では、新規ナノ磁性粒子の糸球体腎炎モデルマウスにおける造影効果ならびに腎炎評価の可能性について検討した。
【対象・方法】糸球体腎炎モデル動物としてIgA腎症の自然発症モデルマウス(HIGAマウス; 日本エスエルシー)を対象とし、糸球体腎炎の発症時期を、尿のMRS及び組織染色によって確認した。発症前及び発症後の時期に、新規ナノ磁性粒子、市販のSPIO(Resovist;アイロム製薬)又は生理食塩水を尾静脈より投与した。投与前及び投与後4週まで経時的に撮像し、各臓器の造影効果と分布の違いを比較した。対照群に正常マウス(C57BL/6N; 日本エスエルシー)を用いた。Bruker社製11.7 T超高磁場MRI装置(AVANCE II 500WB)を用いて、2D-T2FLASHで撮像した。4週後の撮像後、マウス臓器を灌流固定し、摘出後、ex vivo で高精細画像も撮像した。MRI観察後、更に組織切片を作成し、組織レベルでの評価を行った。
【結果・考察】腎炎発症後、Resovist投与群では、対照群と同様に、肝臓、脾臓に多量に残留し、長期間の低信号を示し、腎臓では、特に皮質の腎小体に多く分布した。新規ナノ磁性粒子投与群では、対照群と同様に、肝臓における一時的な造影効果を示したが、長期の残留は見られず、輝度は回復する傾向が見られた。一方、対照群では前回の報告同様特異的な部位に造影効果を示していたのに対し、腎炎マウスでは、磁性粒子の蓄積は観察できなかった。新規ナノ磁性粒子とResovistの蓄積メカニズムは異なっていると考えられるが、新規ナノ磁性粒子のみが正常と腎炎発症マウスでの蓄積が異なっている。新規ナノ磁性粒子をを用いることで、腎機能や腎疾患を評価する可能性を示した。
【参考文献】1)Ohno K, et al. Biomacromolecules 2012; 13: 927-936. 2)陳挺,他. 第41回日本磁気共鳴医学会大会2013; P-2-087.