第23回認知神経リハビリテーション学会学術集会

講演情報

一般演題

ポスター発表

[P3] 神経系(下肢・体幹)

[P3-10] 複数の感覚障害を呈した進行性多巣性白質脳症症例

*宮島 唯一1、安田 真章2 (1. ホームケア本八幡、2. 東京大学医科学研究所附属病院)

【はじめに】
 PMLは一般的に視力障害,運動障害,知能,記憶障害,失語症など発症し経過中に病巣が多くなるにつれ,運動麻痺や認知機能の障害の率が高くなり,言語障害,脳神経麻痺など様々な症状が出現し,中央生存期間は1.8年とされている.発症から4ヶ月,体幹正中性の認識が困難な右片麻痺を呈したPML患者に対して行った訓練の一例として,自己の体性感覚と他者の体性感覚の予測を行う過程で体性感覚の構築が図れたため紹介する.

【症例紹介・病態解釈】
 202X年年末に居住先のタイでHIV感染,PMLを発症した50代日本国籍の男性.202X年+3ヵ月に帰国し,兄家族宅に居住.翌月4月から訪問リハビリを1時間週2回,内1回は他のスタッフと行った.ご自身の歩行を「どこに向かっているかわからなくなる」家族からは「真っすぐ歩いていない」「壁にぶつかっている」と言われるがわからないと記述される.右半身・体幹の空間情報の構築の変質があり,また口頭での左右認識が困難.リハ内容の大まかな記憶は行えるが身体・左右の内容は曖昧であった.また視野障害はないが遠近感の不良あり,トイレに歩く際に通り過ぎリビングまで歩かれていた.空間情報構築の変質・遠近感不良により,身体と環境の相互作用の中で身体表象・運動表象の変質を呈していたと推測した。介入当初は,接触情報や空間情報の構築,視覚情報から体性感覚の構築を図る訓練を行ったが,「見てもそれが正しいかがわからない」と記述された.他者が行っている行為から体性感覚の予測・行為の目的の予測を行うことで,徐々に体幹空間情報が行え,臀部圧・足底圧の構築,環境との相互作用が行え,歩容改善がみられた.

【考察】
 情報構築のきっかけは,過去に経験がある腰痛であった.他者が行っている行為から体性感覚の予測を行う中で,腰痛の原因が不良姿勢からくると学習し,Skinner,B.Fにおけるオペラント条件付けの負の強化から腰部だけではなく,自身の姿勢を判断・知覚するきっかけとなり, 他者が行っている行為との整合性が得られ行為の改善が生じたと考える.

【倫理的配慮,説明と同意】
 症例とその家族に対して本発表の目的を説明し,書面にて同意を得た.