[07発-ポ-06] リズム体操の導入が幼児の基本的動作の質的変容に及ぼす影響
近年、子どもを取り巻く社会的・自然的環境の変化により子どもの生活から運動の機会が奪われ、幼児期における基本的動作の習得が課題とされている(文部科学省、2012;日本学術会議、2017)。加登本(2021)は、子どもが自発的に取り組め、楽しみながら動きを習得できるリズム体操に着目し、走・跳・投の粗形態の獲得を目指した「ウキウキたいそう」を開発したが、幼児の基本的動作の変容に与える影響は検証されていない。そこで本研究は、リズム体操の導入が幼児の基本的動作の質的変容に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。対象は、広島県内の私立幼稚園1園に在籍する年中児60名、年長児61名の計121名であった。リズム体操には「ウキウキたいそう(以下、体操)」(加登本、2021)を採用した。体操を幼稚園のプログラムの一環として実施しやすくするために、①運動会の体操として導入、②家庭への体操DVDの配布、といった配慮を行った。介入は、運動会前の10日間、設定保育の中で毎日体操を実施した。運動会の2週間前、及び運動会終了2週間後に、疾走動作、跳躍動作、投球動作の撮影を行った。3つの基本的動作について、中村ほか(2011)の観察的評価法を用いて2名で評価し、得点化した。また、家庭での波及効果を捉えるために保護者に体操のDVDの視聴状況をWEBアンケートにより調査した。解析は、介入前後の各動作の動作得点について、性・学年ごとに対応のあるt検定を実施した。分析の結果、介入の前後で年中の女児の跳躍動作(p=0.182)以外で、介入後が有意に高値を示した(p=0.000 - 0.018)。73.8%の保護者が体操のDVDを家庭で「よく視聴した」「時々視聴した」と回答しており、このような家庭への取組が介入の効果を高めた可能性がある。以上のことから、園と家庭とが連携したリズム体操の取組は、幼児が楽しみながら基本的動作を高めることができる可能性が示唆された。