[03心-ポ-37] 香りのある空間で高強度運動を実施した際の心理的影響
本研究は、3条件の香りの呈示下において、高強度運動として自転車エルゴメーター(894E、モナーク社)での最大努力15秒間ペダリングを3セット実施(負荷:体重の7.5%)した。3セットのパフォーマンス及びセット間と運動後60分までの生理的・心理的評価への影響を検討した。本研究では、おもに心理的な側面からの結果を報告する。心理面の評価は、POMS2日本語短縮版を使用し、香りの評価とパフォーマンスへの影響の感じ方についてVAS(visual analogue scale)で回答を求めた。香りは、事前の調査で選定されたグレープフルーツ・ストロベリーに加えて無香(コントロール条件)の3条件とした。分析の結果、60分後の香りの印象に関する回答では、一元配置分散分析(ANOVA)の結果有意差が認められ、多重比較(Tukey法)の結果、香りの「好み」や「強さ」、香りによって「活力がみなぎる」「リラックスをサポートする」「疲労回復をサポートする」の回答で、コントロール条件よりグレープフルーツ条件の方が有意に高い得点を示した(p <.05)。また相関分析からは、グレープフルーツ条件のみ「パフォーマンス発揮をサポートする」評価と1回目と2回目直後の心拍数に有意な正の相関(ともにp <.05)が認められた。一方で、ストロベリー条件では、香りを「強く」感じていると、「好み」の評価は有意に低く(p <.05)、「活力」(p <.001)「リラックス」(p <.01)「パフォーマンス発揮」「疲労回復」(ともにp <.05)は、有意に低値を示すことが明らかになった。本研究では、条件間のパフォーマンス値の有意な差は認められなかったものの、香りが呈示された条件下での高強度運動では、グレープフルーツ条件では香りの評価が一部のパフォーマンス発揮の数値に正の影響をもたらし、ストロベリー条件では負の影響をもたらす可能性が示唆された。