[03心-ポ-16] 実行機能と運動習慣の関係についての探索的検討
運動は心身の健康維持・増進に効果的であるだけでなく、認知機能に対しても影響がある。運動習慣のある者は認知機能が高いことが報告されているが、先行研究の結果は必ずしも一致していない。認知機能は様々な分類に分けられるが、その中でも実行機能は記憶や言語を用いる高次の認知機能である。実行機能は注意のシフト、反応抑制、そして記憶の更新の3つに分類できると考えられており、こうした下位要素によって身体活動から受ける影響が異なることが考えられている。本研究では3つの実行機能と運動習慣の関係について検討を行った。 大学生19名(女性9名、男性10名、平均年齢20.05±1.61)が実験に参加した。注意のシフトとしてTrail Making Test日本版を、反応抑制としてStroop課題を実施した。記憶の更新は3つの作業記憶コンポーネントに対応している記憶検査を実施した。運動習慣評価として、International Physical Activity Questionnaire Short Version (IPAQ-SV)を実施し、1週間あたりの運動習慣を評価した。 IPAQ-SVと各種検査の結果との相関を求めた結果、TMT B-Aとの間のみに負の相関が見られた。運動習慣の評価が高いほど注意のシフト機能が高いことが考えられた。しかし、運動習慣は年齢とも強い負の相関が見られた。このため、年齢を調整した偏相関係数を求めたところ、TMTとの相関は統計的に有意ではなくなった。本研究では先行研究で見られた運動習慣と実行機能の関係は見られなかった。可能性としては2つ考えられる。1つは先行研究で得られた結果も年齢が潜在変数として媒介していた可能性である。2つめは、本研究の参加者の運動習慣は一般と比べても非常に多い傾向にあった。このため、天井効果が出た可能性も考えられる。多様な実験参加者を含めた更なる検討が望まれる。