[03心-ポ-22] タイムプレッシャーの強度と反応時間および正答率との関係
スタンバーグ課題からの検討
球技スポーツにおける状況判断場面では、タイムプレッシャー(TP)といった負荷がかかる中で、プレーの正確性が求められる。このような複雑な状況下で意思決定を行うためには、一時的に相手の位置や方向を記憶するといった作業記憶が重要な役割を果たしている。その一方で、TPと作業記憶の関係については未だ不明な点が多い。そこで本研究では、スタンバーグ課題におけるTPの強度が反応時間および正答率に及ぼす影響について検討することを目的とした。 実験参加者は、体育系のA大学に所属する学生14名(男性8名、女性6名、平均年齢19.00±2.86歳)であり、エディンバラ利き手テストによって右利きと判定された者であった。課題にはTPの強度を操作したスタンバーグ課題を用いた。スタンバーグ課題では、3、5、7文字の大文字アルファベットからなる無意味な文字列を記憶し、その後に呈示される1文字の小文字のアルファベットが記憶した文字列に含まれていたか否かによって左右のボタンを押し分けるよう求めた。TPの強度は400、500、600、700、800 msとし、各条件64試行実施した。 その結果、反応時間では、各文字数条件におけるTPの強度400 msは500、600、700、800 msより、TPの強度500 msは600、700、800 msより、TPの強度600 msは800 msより有意に短かった。正答率では、3文字条件は5文字、7文字条件より、5文字条件は7文字条件より有意に高く、各文字数条件におけるTPの強度400 msは500、600、700、800 msより有意に低かった。 スタンバーグ課題では、記憶する文字数が多いほど作業記憶の負荷が高まる。しかしながら、本研究では、TPの各強度において反応時間に有意な差は認められず、作業記憶の負荷に影響がみられなかった。以上のことから、実験参加者はTPに対応するため、文字数に応じた方略で課題を遂行していた可能性が示された。