日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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学校保健体育研究部会 » 【課題B】保健体育授業をいかに良質なものにするか

学校保健体育研究部会【課題B】口頭発表①

2023年8月30日(水) 10:20 〜 11:19 RY203 (良心館2階RY203番教室)

座長:岩田 英樹(金沢大学)

10:35 〜 10:49

[学校保健体育-B-02] 台湾の学校教育における「性の多様性」の学習内容(保)

「健康と体育」の教科書に注目して

*永良 芽依1 (1. 天理大学大学院)

日本では、2024年度から小学校で使用される保健の教科書において、LGBTに関する記載が大幅に増える見込みであることが報じられている。しかし、中高の学習指導要領には未だ性の多様性に関する内容は組み込まれておらず、性の多様性の理解促進への対応が遅れていると言える。一方で、日本と同じ東アジアに位置する台湾は、性の多様性の理解を促進させる取り組みを他の地域に先駆けて実践している地域である。具体的には、「性別平等教育法」があげられる。2004年に制定されたこの法律は、東アジアではじめて性的指向や性自認を理由とする差別の解消を規定している。
 そうした台湾の学校教育においては、性別平等教育法に基づき、性教育を含む性別平等教育が全ての学習領域のなかに含まれている。特に性に関しては、日本の保健体育に相当する「健康と体育」という科目で扱われている。この「健康と体育」の教科書には、性別平等教育に関する単元が設けられ、性の多様性に関する内容が組み込まれている。
 したがって本研究では、台湾の学校教育における「健康と体育」の教科書に、性の多様性に関する内容がどのように記されているかを、実際に使用されている教科書に注目し考察した。
 記載されている事柄については、例えばジェンダー平等の理解として、小学1年生の教科書に、仕事や家事、クラスにおける役割分担について書かれている。小学4年生の教科書では、男は青色、女は赤色、男子は髪が短い、女子は長いなど、色・服装・髪型・スポーツ・職業からみるジェンダーの固定概念を取り上げている。「現代社会は性別平等を重視し、誰もが自分の好きなものを選択できる権利を持っている」と記されており、性の多様性についても理解を促す内容であるといえる。さらに教科書の挿絵は、従来のような異性愛を想像させる挿絵が多いが、異性愛でもなく同性愛でもない、性別に捉われない挿絵も一部の教科書には見られた。