日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

講演情報

本部企画シンポジウム

本部企画シンポジウム2/これからのユース・スポーツを考える―運動部活動の地域移行をめぐって―

2023年8月31日(木) 17:00 〜 19:00 寒梅館ホール (寒梅館1F・地下1階ハーディーホール)

コーディネーター:水上 博司(日本大学)
指定討論者:清水 紀宏(筑波大学)

[本部企画-S2-2] 地域移行の失敗の歴史

1970年代の社会体育化と2000年前後の総合型クラブ連携を振り返る

*中澤 篤史1 (1. 早稲田大学)

<演者略歴>
専門はスポーツ社会学。1979年大阪生まれ。東京大学教育学部卒。博士(教育学、東京大学)。一橋大学講師・准教授を経て、現在早稲田大学スポーツ科学学術院教授。主著は『運動部活動の戦後と現在』(青弓社、2014)。論文「中学校体育連盟の形成過程(1947-1967)」(『体育学研究』66巻所収)で2022年度学会賞受賞。
発表者は運動部活動のあり方や問題を社会学・歴史学の方法論を用いて研究してきた。その立場から本シンポジウムに貢献するため、本発表では、過去の失敗の歴史を振り返ることで現在の地域移行政策の成否を考える。
 矢継ぎ早に出された地域移行政策の是非は慎重に問われるべきだが、それとは別に、そもそもこの政策は上手く行くのか。実際のところ、部活動を学校から地域へ移行できるのか。
 発表者が地域移行政策の成否に疑問を差し挟む理由は、過去に2度、地域移行は失敗してきたからである。1度目は1970年代であり、膨れあがってきた教師の負担問題を背景に「社会体育化」というフレーズで運動部活動の地域移行が謳われ、模索され、結局は失敗した。2度目は2000年前後であり、スポーツ振興基本計画の策定とその後の実践において、総合型地域スポーツクラブとの連携が謳われ、模索され、結局はやはり失敗した。
 1970年代の社会体育化と2000年前後の総合型クラブ連携は、どのような経緯を辿り、なぜ失敗したのか。当時の資料や議論、発表者が集めた調査データを用いて経緯を振り返り、失敗の理由を探ることで、現在の地域移行政策の可能性や課題に対する示唆を得たい。