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[健康福祉-C-06] 高齢者における筋力低下に関連する遺伝子多型の探索(生)
背景: 加齢による筋力低下の遺伝率は22-35%であると報告されている。一方で関連する遺伝子多型については特定されていない。また、筋力低下に影響する遺伝要因は筋機能に関連する表現型に幅広く影響する可能性が考えられる。目的: 高齢者における筋力低下に関連する遺伝子多型をゲノムワイド関連解析(GWAS)を用いて探索することとした。方法: 対象者は60歳以上の高齢者85名(男性53名、女性32名)とし、ジャポニカアレイv2(TOSHIBA 社製)を用いてジェノタイピングを行った。2018年と2021年に高齢者の握力を測定し、3年間の変化率のGWASを行った。危険率はp<5×10-8、サジェスティブラインをp<5×10-5とした。結果: 対象者の握力は3年間で7.4±9.4%の低下が認められた。GWASの結果、p<5×10-8に達する遺伝子多型は0多型、p<5×10-5に達する遺伝子多型は346個45領域同定された。そのうち、p=5.87×10-6の有意確率でTropomyosin3(TPM3)遺伝子rs16835846多型が同定された。TPM3は筋に発現するアクチン結合タンパク質であり、TPM3遺伝子の変異は筋の疾患に影響することが報告されている。TPM3遺伝子rs16835846多型のGG型はTPM3遺伝子の発現が低く、握力の低下率はGG型-17.2±12%、AG型-8.1±7.4%、AA型-2.4±8.4%であった。性別および2018年の握力を考慮した場合においても遺伝子多型間で有意差が認められた(p=9.0×10-6)。結論および今後の検討: 高齢者における筋力低下に関連する遺伝子多型は45領域同定され、そのうち筋の疾患に影響する遺伝子をコードする遺伝子多型が同定された。今後はこれらの遺伝子多型が筋機能に関連する他の表現型へ及ぼす影響についても検討していく。