日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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競技スポーツ研究部会 » 【課題C】ハイパフォーマンススポーツ(トップレベルの競技スポーツ)におけるトレーニングをいかに効果的に行うか

競技スポーツ研究部会【課題C】口頭発表⑥

2023年8月31日(木) 09:00 〜 09:59 RY107 (良心館1階RY107番教室)

座長:高松 靖(びわこ成蹊スポーツ大学)

09:15 〜 09:29

[競技スポーツ-C-22] 体操競技における戦術的トレーニングの意味に関する発生運動学的分析(方)

*松山 尚道1 (1. 天理大学)

体操競技に関する研究について、体力的要素を取り上げたものや技術的要素を取り上げたものは多く存在するが、戦術的要素に着目したものは決して多くはないだろう。発生運動学的立場から研究がされている場合でも、実施者のコツに着目した、いわゆる技術的な研究が圧倒的に多いといえる。体操競技は一般的にクローズドスキルと呼ばれる運動が中心になるため、対人競技や集団球技のように敵や味方といった他者との関係性が運動学習の主題に上がる事は確かに少ない。
  一方で、実際の練習現場で指導者として関わっていると、勝負を意識した時に(ここでは出来る限り高得点を獲得しようと意図する時の意)、かなり戦術的要素を考えなければならない場面に気づくことが出来る。競技特性上、圧倒的な身体能力(体力的要素)と卓越した身体技術(技術的要素)を持ち得ていれば、戦術的要素はあまり重要視されない傾向があると考えることができる。しかし、正確かつ確実に実施できる演技内容では目指すべき得点に至らない場合に、やや安定感に欠ける技を実施する必要に迫られることがある。また、本番特有の緊張感の中で思い通りに身体を制御しきれないかもしれないという現実的な問題を考えると、少しでもリスクを減らして失敗や減点を抑え、最低限の得点を確保するというという戦術的要素の重要性が顕在化するといえるだろう。
 本研究では、筆者の指導現場の例証の中から、出来る限り大きな失敗のリスクを減らし、減点を最小限に抑えることを目指した取り組みを紹介し、その意味やトレーニング上での位置づけについて検討する。もちろん、競技の性質としての完璧かつ美的にも優れた実施を目指すという点については否定するつもりはない。多くの選手が積極的に競技力向上を目指しつつ、その成果を競技会で発揮するにあたり、有用となる戦術的なトレーニング方法について明らかにしたい。