14:00 〜 14:14
[競技スポーツ-C-31] 情動想起が上肢筋における皮質脊髄路興奮性に及ぼす影響(生,心)
【背景】情動は脳の運動制御系に影響する。例えば、脳から筋への下行性経路である皮質脊髄路の興奮性(CSE)が情動介入によって変調することが知られている(Coombes et al., 2009, CABN)。しかし、情動が運動制御系に影響する神経機序の詳細、機能的意義、行動との関連性は不明である。本研究では、筋の機能的特性に応じて、CSEに対する情動系変調の影響が異なるとの仮説を立て、これを検証することを目的とする。
【方法】健常者4名を対象とした。CSEの指標として経頭蓋磁気刺激 (TMS) によって誘導される運動誘発電位 (MEP)を用いた。5種類の情動 (恐怖、悲しみ、怒り、喜び、ニュートラル)にまつわるエピソードを想起中に、一次運動野に対するTMSを12回行った(約1分間)。また、各情動想起課題中の上肢4筋におけるMEP振幅値を測定した。測定筋は、前腕2筋 (尺側手根屈筋、橈側手根伸筋)、手内筋2筋 (第一背側骨間筋、短母指外転筋)を対象とした。
【結果】ニュートラル条件におけるMEP振幅値を1として正規化した際の、各情動想起時における平均MEP振幅値を評価した。恐怖、悲しみ、怒り、喜びの情動介入条件において、尺側手根屈筋におけるMEP振幅値の増大は、橈側手根屈筋手根伸筋よりも顕著であることが認められた。また、尺側手根屈筋では喜び条件、橈側手根伸筋と第一背側骨間筋では恐怖条件、短母指外転筋では悲しみと怒り条件においてMEP振幅値の増大が最も大きく見られた。
【考察・結論】橈側手根伸筋と比べて、尺側手根屈筋においてCSEの増大が顕著に見られ、情動によって影響を受けやすい筋が存在する可能性が示された。すなわち筋特異性の仮説を支持する結果となった。また、CSEの変調は情動の種類によって異なることが示された。今後は被検者の数を増やし仮説検証を進める予定である。
【方法】健常者4名を対象とした。CSEの指標として経頭蓋磁気刺激 (TMS) によって誘導される運動誘発電位 (MEP)を用いた。5種類の情動 (恐怖、悲しみ、怒り、喜び、ニュートラル)にまつわるエピソードを想起中に、一次運動野に対するTMSを12回行った(約1分間)。また、各情動想起課題中の上肢4筋におけるMEP振幅値を測定した。測定筋は、前腕2筋 (尺側手根屈筋、橈側手根伸筋)、手内筋2筋 (第一背側骨間筋、短母指外転筋)を対象とした。
【結果】ニュートラル条件におけるMEP振幅値を1として正規化した際の、各情動想起時における平均MEP振幅値を評価した。恐怖、悲しみ、怒り、喜びの情動介入条件において、尺側手根屈筋におけるMEP振幅値の増大は、橈側手根屈筋手根伸筋よりも顕著であることが認められた。また、尺側手根屈筋では喜び条件、橈側手根伸筋と第一背側骨間筋では恐怖条件、短母指外転筋では悲しみと怒り条件においてMEP振幅値の増大が最も大きく見られた。
【考察・結論】橈側手根伸筋と比べて、尺側手根屈筋においてCSEの増大が顕著に見られ、情動によって影響を受けやすい筋が存在する可能性が示された。すなわち筋特異性の仮説を支持する結果となった。また、CSEの変調は情動の種類によって異なることが示された。今後は被検者の数を増やし仮説検証を進める予定である。