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[14介-口-01] 高齢者の体力変化について
10年間の縦断的観察研究
目的 本研究では、地域の住民を対象に、毎年実施されている体力測定会に参加する高齢者で、初回時と10年目の測定値を有する者について、10年間の体力の推移を検討することを目的とした。 方法 2002年から2019年までに、毎年実施された体力測定会の参加者で、初回時と10年目のデータのある男性57名、女性110名を対象とし、体格・体力を、初回時と10年目で比較した。性差は独立変数のTテスト、年齢群間差は分散分析法、初回時・10年目の差は対応のあるTテストで検定した。また、初回時・10年目の平均値から10年間の減少率を算出した。 結果 体力は多くの項目で性差が認められた。体前屈は女性が男性を上回ったが、他の体力値は男性が女性を上回った。年齢群間差が有意であったのは握力、垂直跳び、脚筋力で、女性ではこれにSSTwや歩行速度が加わった。初回時・10年目の平均値の比較では、全対象者で見ると、歩調以外の全ての項目に有意差が認められた。チェアスタンドと脚筋力は10年目の値が上昇していたが、他の項目は減少していた。減少率は、閉眼・開眼片脚立ち、垂直跳び、握力で大きかった。10年間の推移は、年齢階級によっても異なっていた。 結論 体力測定会に参加する地域高齢者を対象に、10年間の体力の推移を検討した所、多くの体力項目が低下する中、下肢筋力系(チェアスタンド、脚筋力)の項目には10年後に向上が見られた。これには、対象集団の特性(健康意識の高さ)が関連していると考えられ、このような対象者の生活様式を観察することで、健康寿命延伸のための要因を探ることが可能と考える。しかし、バランス能(開眼・閉眼片脚立ち)や垂直跳び、握力の低下は、どの年齢群においても低下が認められたのは興味深く、運動習慣や運動様式との関係など、今後の課題である。