日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

講演情報

専門領域別研究発表

専門領域別 » スポーツ人類学

スポーツ人類学/口頭発表①

2023年9月1日(金) 13:00 〜 14:23 RY306 (良心館3階RY306番教室)

座長:高橋 京子(フェリス女学院大学)、尾川 翔大(岐阜薬科大学)

13:42 〜 14:02

[12人-口-03] ドイツの柔道教育における「TAISO」の捉え方

*ソリドーワル マーヤ1、曽我部 晋哉2 (1. 津田塾大学、2. 甲南大学)

本研究は科学研究費助成事業(若手研究)「ドイツにおける生涯スポーツとしての柔道の捉え方:対象者別の指導法を中心に」(2020‐2024 年)の一環としてドイツ柔道連盟の中高年に対する柔道指導の取り組みを報告する。今回、考察の焦点を当てたのは、ドイツ柔道連盟が2020年に開発した大人を対象とした「TAISO(以下、「柔道体操」とする)」である。 ドイツ柔道連盟の柔道体操の導入の背景は、日本にも見られる柔道人口の減少傾向である。ドイツの柔道登録者数は、14 才以下の青少年の割合が減少しているが、41才以上の中高年の割合が徐々に増加している。この柔道人口の推移の影響を受けて、ドイツ柔道連盟は子供を中心とする教育的なスポーツから、大人を中心とした生涯スポーツとしての普及に注力し始めた。これは、柔道体操の主な対象が中高年であり、柔道普及のターゲット層として注目しているからである。柔道体操は「試合」、「乱取り」、「形」に加えて、柔道の四ツ目の柱として位置付けられており、2022年に大きく改正された昇級規定の選択科目として追加されている。つまり、1級へ昇級しようとする受験生は必修科目に加えて、競技柔道、形、護身術、柔道体操という4つの中から領域を一つ選び受験しなければならない。さらに、指導者養成のシステムの中にも、柔道体操の指導員資格も追加された。 本研究は柔道体操のコンセプトを明らかにすると同時に、柔道体操の昇級昇段及び指導者養成に焦点を当てながら柔道教育における位置づけを考察する。研究方法は、柔道体操に関する一次資料ならびに2022年に大きく改正されたドイツ柔道連盟の昇級規定の分析によるものである。また、ドイツ柔道連盟が2023年5月17日から21日にかけてドイツのバート・エムスで開催した柔道フェスティバルにおいて現場調査を行い、柔道体操指導者研修会の視察を行った。