日本体育・スポーツ・健康学会第73回大会

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バイオメカニクス/口頭発表①

2023年9月1日(金) 14:40 〜 15:54 RYB1 (良心館地下1階RYB1番教室)

座長:小池 関也(筑波大学)

15:25 〜 15:39

[05バ-口-04] キック技能の異なるラグビー選手のパントキック動作の比較

*新垣 太世1、阿江 通良2、沼津 直樹2、伊藤 雅充2 (1. 日本体育大学大学院、2. 日本体育大学)

パントキックとは、ボールが地面に接触する前にインパクトするキックのことであり、相手ディフェンスのいない空間にボールを蹴りこむことやキックパスなどに使用することで有利に試合を進めることができる。しかし、飛距離の調整に関する研究はあまり行われていないようである。したがってパントキックに要求される重要な技能の1つは、「長短の距離を蹴り分ける技能」である。本研究では、キック技能の異なるラグビー選手のパントキック動作を分析・比較し、パントキックに関する基礎的知見および指導への示唆を得ることを目的とした。被験者は大学生選手9名と社会人選手6名とし、試技は3種類のキック距離の異なるパントキック(35m、50m、最大努力)とした。光学式データ収集システムを使用して3次元座標データを収集し、リリースパラメータおよび動作パラメータなどを算出した。その結果、リリーススピードは3種類のキック全てで社会人選手が大きかった。助走角度は、両群ともにキック距離とともに増加しており、35mキックから50mキックでは、約15度以上も増加していた。このことから、被験者は大きく分けて2種類(キック方向に対して正面と斜め)の助走を使い分けていたと考えられる。スイング局面では、学生選手は蹴り脚の最大股関節屈曲角速度を増加させスイングスピードを獲得していたのに対して、社会人選手は膝関節伸展角速度により依存してスイングスピードを獲得していたと考えられる。一方、軸足の最大膝関節伸展角速度は、飛距離が増しても学生選手に有意な変化はなかったが、社会人選手は、飛距離とともに軸足の最大膝関節伸展角速度が増加していた。このことから、社会人選手では、軸足の膝関節伸展が大きな蹴り脚のスイングスピードの獲得に関与していると考えられる。