10:32 AM - 10:47 AM
[11教-口-03] 体育における外国人保護者の関与の促進を目指した教師教育プログラムの開発
アンドラゴジー理論を用いた効果の検証
近年、日本の公立小学校においては、外国人児童の増加に伴って人種や言語、文化、宗教等の多様な背景を有する子どもに対応した指導が求められている。とりわけ体育においては、文化や宗教に関わる指導上の配慮や健康管理等の安全対策を徹底するためにも、我が子の教育的ニーズについて理解する外国人児童の保護者の関与が不可欠である。発表者はこれまで、小学校教員が体育における外国人保護者の関与を促す中で、その言語や文化、社会的規範の違い、貧困、就労状況、偏見といった複雑化した問題に直面していることを明らかにした(戸村ほか、2020)。外国人保護者の教育的な関与が不十分な場合、体育において外国人児童が身体的・心理的・社会的に不利益を被り、学習面で困難な状況に陥る可能性がある。これらの問題を解決するためには、教員として必要な知識とスキルを習得するための教師教育の確立が求められる。そこで本研究は、アンドラゴジー理論(Knowles、1989)を枠組みとして、発表者が開発した体育における外国人保護者の関与の促進を目指した問題解決型のオンライン教師教育プログラムにおける小学校教員の学習経験を明らかにし、プログラムの効果を検証することを目的とした。半構造化面接法による質的研究を用いて、9名の公立小学校教員を対象にデータを収集した。継続的比較分析法による分析の結果、外国人保護者の関与についての理論的な知識や他の教員の実践経験を学ぶことにより、問題解決を中心とした自己主導的な学習が推進されたことが示された。また、その中で外国人保護者に対する偏見やステレオタイプが低減されたことが示唆された。本結果は、小学校教員が外国人保護者の関与を促進するための有効な教師教育の手段や方法、教員が学ぶ必要のある知識やスキルの内容を提示するものであり、新たな視点から今後の体育における教師教育の充実・発展に寄与することが期待される。