[03心-ポ-68] 高校野球・リーダーとフォロワーの関係
変革型リーダーシップの視点からとらえた指導者と選手の関係
第3期スポーツ基本計画で取り組む視点として、スポーツを「つくる/はぐくむ」などがあげられている。この「つくる/はぐくむ」は、自主性・自律性を促せるような指導ができる質の高いスポーツ指導者の育成を目指したものであり、学校の運動部活動が新たな充実した取組みとして、優れた指導者の育成をすすめるものと捉えることができる。指導者にはリーダーとしての役割が重要であり、本研究では、指導者のリーダーシップ行動について指導者の自己認識と選手による認識に焦点をあてて、その特徴を明らかにすることを目的とした。 高校野球の選手約1,000名と指導者30名を対象として、インターネット上での質問調査を実施した。調査は、夏原他(2020)の変革型リーダーシップ尺度(DTLI-YS)と田中(2014)の多水準自己概念尺度を使用した。指導者のリーダーシップ行動および自己概念について指導者の自己評価と選手による他者評価により定量的に評価した。選手の評価と指導者の評価の差をリーダーシップおよび自己概念のギャップ値として、因子構造を確認し、クラスター分析をおこなった。 本研究の結果、30チームは4つのクラスターに分類することができ、リーダーシップのギャップ値の傾向から「指導者主導型」、「選手主導型」、「選手慎重型」、「指導者・選手協調型」と命名した。先行研究において、コーチの変革型リーダーシップがパフォーマンスの向上だけでなく、選手の内発的動機づけや集団凝集性など、選手の行動的側面や心理的側面において良い影響をもたらしていると報告されている。本研究ではギャップ値を用いることで4つのグループに分類でき、類型ごとのリーダーシップや自己概念の特徴を確認することができた。また、変革型リーダーシップにおいて、リーダーの自己評価だけでなく選手からの評価を用いることで、チームの特徴をより多面的に評価できる可能性を示すことができた。