[04生-ポ-16] 女子サッカー選手における実行機能低下を招くストレス要因
認知心理学手法を用いた予備的検討
前頭前野の担う注意集中、選択判断といった実行機能は試合時の瞬時で正確な状況判断だけでなく走りながらボールを蹴るといった運動協調性の発揮を担うことからアスリートのパフォーマンス発揮に重要な機能である。実際に、サッカー選手において、競技レベルの高い選手は実行機能が高いことが示唆されている (Vestbergら, 2012)。しかし、筋発揮や運動持久力といった運動パフォーマンスに関するコンディショニングは様々な研究が行われている一方で、実行機能に主眼を置いたコンディショニングは未だ皆無である。本研究では、実行機能発揮が競技パフォーマンスを大きく左右するサッカー選手の実行機能低下の要因を明らかにすることを目的とし、2回の認知心理測定を実施した。大学女子サッカー選手30名に対し、冬季リーグへのトレーニング開始前の8月と冬季リーグ直前の12月に実行機能課題と心理指標の測定を行った。実行機能課題には、空間性ストループ課題を用い、反応時間と正答率を解析に用いた。心理指標には、抑うつ指標のK6、活気・疲労感の評価としてPOMS2、慢性疲労評価としてチャルダー疲労指標を評価した。精神的ストレス尺度として、大学生日常ストレッサー尺度を、身体的ストレス尺度として、トレーニング負荷 (トレーニングの強度×時間を質問紙で回答)を用いた。測定2回の差分から、POMS2の疲労感とストループ課題反応時間に正の相関傾向が見られた (r=0.34, p = 0.07)。POMS2疲労感は大学生ストレッサー尺度の実存的ストレッサー項目と正の相関関係が認められた (r=0.44, p < 0.05)。以上の結果から、女子サッカー選手において、精神的ストレッサーによる疲労感増加が実行機能低下に関与する可能性が示唆された。今度生理的ストレス指標と合わせて検証し、実行機能に着目した新たなコンディショニング法開発を目指す。