[09方-ポ-22] バスケットボールの戦術行動に関する基礎的知識における状況認知とプレイ選択の関連
ボールゲームにおける状況判断能力が発揮されるには,「選択的注意」「認知」「予測」「意思決定」の各過程が関わっていることが知られており,プレイ中はこれらの過程が時系列的に瞬時に行われている.競技力に関わる基本的知識の有無はプレイ時の状況判断の正確性に深く関わっており,競技力に関わる基本的知識の習得においても,状況の認知→予測→プレイ選択(意思決定)の流れがあると考えられる.本研究は,バスケットボールの速攻場面の基本的知識における状況認知とプレイ選択の関連およびそれらのプレイ場面の特徴について検討することとした.対象標本は,高等学校のバスケットボール部に所属する男女461名であり,「状況判断と戦術行動に関する知識テスト」(八板ほか,2022)を実施し,その中から状況認知と戦術行動選択がともに評価可能となった10シーンを対象に分析した.状況認知,戦術行動選択の正誤によって2×2のクロス集計表を作成し,χ2検定および変数が正誤の2値であることからΦ係数を算出して検討した.その結果,10項目中7項目が有意であり,それらは正しい状況認知ができた場合に正しい状況認知ができなかった場合よりも正しいプレイ選択をする比率が高かった.速攻の場面の基本的知識において状況認知と戦術行動選択の関連が認められ,何対何かといった状況認知に関する基本的知識の有無が戦術行動の選択に影響を及ぼしていることが確認された.一方,状況認知の正誤に関わらず戦術行動選択の正誤の比率に有意な差の認められない項目が見られた.これらの3項目中2項目は,状況認知の正誤に関わらず正しい戦術行動選択が多かった.状況認知よりも戦術行動選択を優先して習得をしている状況と考えられ,その場面が何対何かといった状況認知よりもその状況でどのような戦術行動を選択するかの知識を優先的に習得する必要性のある場面が存在する可能性が示された.