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[B-19] 日本産ムツボシキジラミ属(カメムシ目:キジラミ科)の分類学的検討
ムツボシキジラミ属Cyamophilaは、既知種の大半が中国から中央アジアにかけての乾燥・半乾燥地帯から知られ、マメ科植物と関係が深い。日本からは、イヌエンジュが寄主のムツボシキジラミC. hexastigmaが古くから知られていた。2000年代以降に、ムツボシキジラミに比べて前翅の斑紋が目立たない近縁種の存在が国内各地から知られるようになり、ウスイロムツボシキジラミ(仮称)と呼ばれている。しかし、本種は羽化後すぐに寄主を離れて分散するとみられ、寄主植物や幼生期が判明せず、分類学的に未検討のまま残されてきた。2021年に、長野県でマメ科のフジキとユクノキで発生する本属の個体群が発見され、形態およびDNAバーコード領域の塩基配列を比較して検討した結果、これらはウスイロムツボシキジラミに該当し、かつ未記載種であることがわかった。これらに加え、街路樹などとして植栽される中国原産のエンジュを寄主とする1種(移入種)が関東地方の低地で確認された。これにより、日本産の本属は3種となる。本講演では、これら3種の形態的特徴、分布、生態、DNAバーコーディング結果と系統、遺伝的多様性などについて紹介する。