日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[C] 害虫管理・IPM(その他)

2024年3月30日(土) 10:30 〜 11:45 C会場 (白橿1)

11:30 〜 11:45

[C-37] 地上出現前交尾がイモゾウムシの不妊虫放飼の防除効果に与える影響

本間 淳1,2,3、◯池川 雄亮1,2,3、日室 千尋1,2,3 (1. 琉球産経㈱、2. 沖縄防技セ、3. 琉大・農)

イモゾウムシは幼虫が塊根を食害することで知られるサツマイモの世界的な害虫である。沖縄県では、不妊虫放飼法 (SIT:人工的に大量増殖・不妊化した害虫を定期的に野外に放飼し、野生虫同士の正常な交尾を妨げる方法)を用いた根絶防除事業を県内の離島で実施し、個体数を減少させることには成功しているが、未だ根絶には至っていない。その原因の1つとして、羽化成虫が性成熟してから土中の塊根から脱出するため、地上に出現する前に野生虫同士で交尾してしまい、SITの効果が下がる可能性が考えられた。そこで、予めイモゾウムシに産卵させたイモ塊根を土に埋め、地上に出現したメス成虫を即座に回収してメスの受精嚢を確認した結果、15%ほどが既交尾であることが判明した。この結果を受けて、害虫の一部 (p)が地上出現前に野生虫同士で交尾する (不妊虫とは交尾しない)状態を仮定した数理モデルを用いて、pが根絶可能性に与える影響を調べた。その結果、pが野生虫の死亡率 (d)と繁殖率 (r)の比率を下回ることが根絶のための必要条件であることが示された (p < d / r)。以上より、同様の繁殖生態を持つ害虫をSITで防除する際には、実験的にこれらのパラメータを調べたうえで、根絶可能性について議論する必要があると結論付けられた。