日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[D] 有用昆虫・昆虫機能利用

2024年3月29日(金) 09:00 〜 11:15 D会場 (白橿2)

10:45 〜 11:00

[D-08] ハスモンヨトウ幼虫を生体触媒に用いたナノカーボン材料の機能化

◯宇佐見 享嗣1,2、河野 英也3、Austen Vic3、周戸 大季3、加藤 智紀3、山田 早人3,4、八木 亜樹子2,3、天池 一真1,3、Phung Quan2,3、藤本 和宏2,3、柳井 毅2,3、伊丹 健一郎2,3 (1. 名大・高等研、2. 名大・WPI-ITbM、3. 名大院・理、4. 名大・IRCCS)

ハスモンヨトウ幼虫は、極めて雑食であるとともに高い薬剤耐性を有すことから難防除害虫として知られる。一方で、ハスモンヨトウ幼虫がアルカロイドやテルペノイドなど植物由来の殺虫活性分子を代謝し、それらの分子変換や機能化が可能であることが明らかにされた。本研究では、ハスモンヨトウ幼虫の生体触媒としての潜在能力に着目し、我が国が世界トップレベルの研究領域であるナノカーボン材料を用いた機能性分子創製を検討した。基質には、代表的なナノカーボン材料であるカーボンナノベルト([6]MCPP)およびカーボンナノリング([6]CPP)を使用した。基質 50 mg を濃度 0.1 mg/g-diet にて混入した人工飼料を幼虫(4〜5齢)50匹へ経口投与し、代謝物を有機溶媒にて抽出した。得られた抽出物からは、基質にはない蛍光を有し、一酸素原子が挿入された機能性分子を得ることに成功した。また、分子の機能化には幼虫の腸内細菌は関与せず、幼虫由来の異物代謝酵素が関与することを明らかにした。さらに、ドッキングシミュレーションおよび分子動力学計算、量子化学計算を用いて、タンパク質-基質複合体の構造および機能化への反応経路を推定し、中間体一つのみを経由し,一酸素原子が直接分子に挿入される反応機構が考えられた。