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[D-25] 線虫注入後の鱗翅目昆虫におけるトランスクリプトーム解析
昆虫は線虫や寄生蜂の卵などの大型異物の侵入を受けると、多数の血球によりその異物を囲い込み、無力化する(包囲化)。侵入した異物を昆虫がどのように認識し、どのようなシグナル伝達経路を経て、包囲化するのかは明らかとなっていない。特に、線虫に対する包囲化の分子メカニズムはほとんど知られていない。本研究では、線虫の包囲化に関与する遺伝子群を同定するため、線虫注入による鱗翅目アワヨトウ終齢幼虫の遺伝子発現変動解析をRNA-seqを用いて行った。線虫(Caenorhabditis elegans)注入2時間後(包囲化前)には昆虫の血リンパ(血球を含む虫の体液)内で多くの遺伝子で発現変動が見られ、発現上昇した遺伝子群の中には、病原体の認識に関わる遺伝子群や自然免疫経路のToll-like receptor signaling pathway に関わる遺伝子群が含まれていた。一方で、比較として用いたバッファーやポリスチレンビーズを注入した昆虫では、傷の修復やストレス応答関連の遺伝子群が顕著に発現上昇していた。線虫注入10時間後(包囲化完了後)では、細胞分化や増殖に関与する遺伝子群の発現上昇が見られた。これらの解析から、異物侵入時に線虫特異的に変動する遺伝子群が存在することが明らかとなった。