日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[E] 化学生態学・生理活性物質

2024年3月29日(金) 13:30 〜 16:15 E会場 (小会議室1)

13:45 〜 14:00

[E-02] キアゲハのオスによる求愛行動を誘発する物質

◯竹内 剛1、秋野 順治2、高崎 浩幸3 (1. 大阪公立大・農、2. 京工繊大・応生、3. 日本蝶類学会)

チョウにおいては、一般に視覚情報が求愛行動を引き起こすが、至近距離では化学物質も求愛行動を進める刺激となる。しかし、フェロモンが同定されている種は少なく、雌性フェロモンはほぼ同定されていない。演者らはキアゲハ(Papilio machaon)の雌性フェロモンの同定を目的に、キアゲハの翅からの抽出物をオスの乾燥標本に塗布して、モーターで羽ばたかせて山頂部で(飛来するメスを)見張っているオスに提示する実験を行った。
 オスの翅のヘキサン抽出物とメスの翅のヘキサン抽出物をそれぞれ見張りオスに提示したところ、オス抽出物を塗布した標本とヘキサンのみを塗布した標本には飛来するもののすぐに飛び去ったが、メス抽出物を塗布した標本には求愛飛翔を示した。次に、メスの翅のヘキサン抽出物をエーテル画分とヘキサン画分に分けて、それぞれを提示したところ、エーテル画分を塗布した標本に対してのみ見張りオスは求愛飛翔を示した。そこで、メスの翅のエーテル抽出物を極性に応じた4画分に分けて、それぞれを提示したところ、微極性物質を含む画分を塗布した標本に対して、見張りオスは最も高い頻度で求愛飛翔を示した。この画分に、雌性フェロモンが含まれていることが示唆される。