日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[F] 生活史・分布

2024年3月29日(金) 13:30 〜 16:30 F会場 (小会議室2)

14:30 〜 14:45

[F-05] アメリカシロヒトリの生活史変化と個体群消滅の長期観測

◯都野 展子1 (1. 金沢大学)

アメリカシロヒトリHyphantria cunea (Drury) は、北アメリカとメキシコに生息しており、現在、日本を含む北半球の温帯地域各地に分布を拡大しています。日本の中央西部に位置する金沢におけるこの蛾の19年間の季節変動に関するデータによると、越冬世代の成虫の個体数は冬の気温と負の相関を示し、夏世代の成虫の個体数は6月の有効温度および暑さと強い相関を示しました。越冬世代について 3.0℃(寒い冬の気温程度)と7.4℃(暖冬の気温程度)で休眠中の蛹の生存、体重減少、真菌感染を調査しました。 その結果、3.0℃に曝露した蛹よりも7.4℃に曝露した蛹の方が体重減少が大きく死亡率が高くなりました。 さらに、暖冬条件で死亡した蛹はほぼすべて真菌に感染していました。 この蛾の分布域は現在高緯度に移行していることが報告されています。6月の暑さが個体群に及ぼす影響は、より複雑かつ多面的なものになります。このような気象変化によるアメリカシロヒトリ個体群の消滅は日本各地で起こったことが推測できます。