日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

口頭発表

[G] 系統・生物地理・進化・種分化

2024年3月31日(日) 09:00 〜 11:30 G会場 (小会議室8)

10:30 〜 10:45

[G-28] 好白蟻性ハネカクシの進化とシロアリにおける社会性の複雑化

◯金尾 太輔1 (1. 山形大・理)

シロアリやアリの巣に住む好白蟻性・好蟻性昆虫の多くは、採餌や外敵からの防御などを寄主の社会性に依存する社会寄生性昆虫と言える。このような社会寄生性昆虫は非常に幅広い分類群から知られているものの、一般的に個体数が少なく飼育観察も難しいことから、その生物学的知見は限られている。社会寄生性昆虫の進化を理解する上で、対象の分類群において社会寄生性種がどのように多様化してきたのかを解明することは重要である。また、社会寄生性の獲得を可能にした要因を明らかにするためには、社会寄生性昆虫の進化と寄主における社会性の進化を関連付けることが不可欠である。本講演では、多くの社会寄生性種が含まれるヒゲブトハネカクシ亜科の中でも、特に好白蟻性種に着目した分子系統解析の成果と、シロアリの社会性の複雑化と深く関わる営巣様式の関係を明らかにした研究を紹介する。系統解析では、本亜科において好白蟻性や特殊な形態が多数回進化した概観が得られたほか、亜科体系に複数の問題点も見つかった。また、好白蟻性ハネカクシが寄主とするシロアリのほとんどは、蟻道を伸ばして複数の採餌場を利用できるものであり、シロアリの営巣様式の複雑化がハネカクシにおける好白蟻性の獲得に寄与したことが示唆された。