[PG01-09] ハマベゾウムシが生息する海浜環境の特徴および脚の形態について
昆虫は、様々な環境に適応し、地球上で一番繁栄したグループとして知られる。その一方で、海浜環境に適応した種は限られており、それらは海浜性昆虫と呼ばれている。しかしながら、海浜性昆虫の生態を調査した研究例は数少ないままである。ハマベゾウムシIsonycholips gotoi Chûjô et Voss, 1960 は、浜辺に生息する海浜性昆虫であり、飛翔能力を持たないゾウムシの一種である。本研究では、ハマベゾウムシの分布と海浜環境の関係を調査した。その結果、本種の分布は浜辺の面積とは関係していなかったが、浜辺を構成する砂礫の粒子サイズとは相関関係がみられ、礫浜よりも砂浜に分布していた。また、本種の脚の形態は末端ほど太い形状をしており、これは粒子サイズが小さな砂上を歩行する際に接地面の面積が大きいことで砂への抵抗が増し、脚が沈み込むのを防ぐ可能性を示唆した。本種は生息環境の悪化から、地域によって絶滅が危惧されている。本研究は、本種の生息に適した海浜環境の知見の集積に寄与するものであり、本種の保全に役立てられる可能性がある。