[PG02-04] ノックアウトカイコを用いた高性能Bt菌の選抜
BT剤は有機農業にも適用可能な生物農薬であり、一般にチョウ目害虫に対して高い殺虫活性をもつが、既存のBT剤が効きにくい害虫も多く知られている。BT剤の性能は、その有効成分であるバチルス・チューリンゲンシス(Bt菌)の殺虫スペクトルに依存するが、より性能の高いBt菌の新規探索には多大な労力と時間を要するため、実用されている菌株種は限られている。Bt菌の殺虫特性は産生する様々な殺虫タンパク質毒素(Cry毒素)の組合せで決まるが、近年、各Cry毒素が作用する害虫の受容体が次々と特定されつつある。そこで我々はクルスターキー系BT剤が作用する複数のCry毒素受容体をノックアウトしたカイコを利用し、既存BT剤にはない殺虫特性を持つ菌株を迅速に選抜するシステムを開発した(応動昆2023年大会)。今回、福岡県生物食品研究所が保有するBt菌約5000株から、本選抜システムを用いて候補株を60株まで絞り込んた。これら候補株について、重要農業害虫に対する殺虫活性を調査した結果、コナガ、ハスモンヨトウ、アワノメイガに対し、市販BT剤と同等以上の高い殺虫効果を示す菌株を複数得ることができたので報告する。