日本昆虫学会第84回大会・第68回日本応用動物昆虫学会大会 合同大会

講演情報

ポスター発表

[PS01] ポスター発表(学生A:コアタイム2)

2024年3月29日(金) 12:30 〜 13:30 桜(学生) (桜)

[PS01-12] 洞窟性チビゴミムシ類における遺伝子の退化と多面発現の関係

◯丹伊田 拓磨1、越川 滋行1,2 (1. 北大院環境科学、2. 北大院地球環境)

光が届かない地下環境へ進出した昆虫は,一般的に複眼や体表面の色素が退化している.このような地下性昆虫は約3000種存在すると見積もられているが,遺伝子の退化について明らかにされた例は数少ない.そこで本研究では,チビゴミムシ亜科に着目し,独立に洞窟へ進出した2種について,昆虫の視覚に関わる遺伝子24個を調べた.その結果,洞窟性チビゴミムシ2種では,opsin遺伝子などの光受容遺伝子や,cardinal遺伝子などの複眼の色素合成遺伝子が共通して退化していることが分かった.このような共通した遺伝子の退化が生じた要因として,それらの遺伝子は複眼のみで働くのか,複眼以外の組織でも働くのかといった多面発現の影響があると考えた.そこで,モデル生物の各組織における遺伝子発現量の情報から多面発現の程度を表す指標を算出したところ,洞窟性チビゴミムシ類で退化している遺伝子は多面発現の程度が小さいことが分かった.以上の結果より,洞窟性チビゴミムシ類では視覚に関わる遺伝子が退化しており,独立に洞窟へ進出した系統であっても,多面発現の影響によって同じ遺伝子が退化したことが示唆された.