[PS01-19] マダラケシツブゾウムシを用いた昆虫側のゴール形成機構解明のためのRNA干渉法の有効性の検証
昆虫の中には、植物上にゴールと呼ばれる異常組織を形成するものが存在する。ゴールは、形成昆虫にとってのシェルターや食料として機能する「延長された表現型」である。ゴール形成には、昆虫が合成する植物ホルモンやエフェクタータンパク質の関与が示唆されているが、安定して操作実験を行える系がほとんど存在せず、その因果関係は証明されていない。そこで我々は、ゴール形成昆虫であるマダラケシツブゾウムシを対象とした、実験室内での周年飼育系を確立し、ゴール形成機構解明を目指した研究を行ってきた。RNAiによる遺伝子機能解析が本種に有効であるかを確認するため、昆虫において体色黒化に関与するMCO2遺伝子を対象とした解析を行った。MCO2遺伝子の2種類のアイソフォームの発現量は、体色が黒化する蛹後期から黒化が終了する羽化直後にかけて上昇し、その後降下に転じた。2種アイソフォームの共通配列を対象としてRNAiを行ったところ、MCO2遺伝子の発現量は有意に減少し、体色の黒化と鞘翅の斑点模様形成が抑制された。このように本種は、RNAiが効果的に機能するため、ゴール形成の分子機構解明のための優れたモデル生物と成り得ることが示された。本会では、ゴール形成に関わる昆虫側遺伝子の機能解析の進捗についても触れたい。