[PS01-23] 捕食者にはハラビロカマキリの白斑は見えていない
カモフラージュしている生物には、検出に役立つ特徴から注意を引く斑、ヘビの眼に似た眼状紋など、敢えて目立つ斑を持つものも知られる。カマキリ目昆虫は一般的にカモフラージュしており、前翅に白斑を持つ種も多い。この白斑の機能について、擬態する上で重要な機能を持つとする説も提唱されているが、実証は行われておらず、その機能は不明である。そこで本研究では、この白斑が捕食回避の機能を持つか検証するため、白斑を持つハラビロカマキリを用い、捕食者である鳥から見た色の定量化を行った。光学分光器で翅の白斑と前翅前縁部、その他の部位の分光反射率を測定し、色覚モデル解析を行った。まずヒトの色覚での解析をし、白斑とその他で有意に色が異なり、この検定の検出力が充分に大きいことを確かめた上で、同様に鳥から見た色の解析を行った。結果、鳥から見た色においては、白斑は前翅前縁部とは大きく異なる色をとったが、その他の部位とは有意差が検出されなかった。これらの結果から、鳥から見るとハラビロカマキリの白斑はその他の部位に溶け込んだ色をしており、斑紋として見えていないと考えられた。このことから、ハラビロカマキリの白斑は捕食回避の機能は持たない可能性が示唆された。