[PS01-31] 潜葉性昆虫クルミホソガの卵の背腹軸の重要性
クルミホソガAcrocercops transecta は、幼虫期を葉の中で過ごす潜葉性昆虫(リーフマイナー)であり、孵化時に卵から直接葉の中に潜り、蛹化前に葉から脱出する。葉から一度出たクルミホソガの幼虫は再び葉に潜ることができないため、蛹化できない成長段階で葉から出た幼虫は死亡する。今回、クルミホソガの卵には背腹軸が存在し、背腹が逆向きで発生した卵は孵化直後に死亡することを発見した。これは、孵化は正常に起こるものの、幼虫が葉と逆側に向けて卵殻を破ることになり、葉に潜れないことによる。そこで、この現象に産卵時の葉に対する重力方向が関係すると仮定し、同じ飼育ケース内に葉面を鉛直に設置した葉と水平に設置した葉をそれぞれ用意したところ、どちらでも背腹逆向きの卵が確認された。さらに、飼育ケース内特有の、狭さや匂いがこもることがストレスとなって異常行動をとった可能性を考え、温室のテント内にクルミの苗木を用意し産卵させたが、この場合にも背腹逆向きの卵が観察された。以上の結果から、クルミホソガの初期死亡要因の一つに卵が葉との接地面に対して背腹逆向きに発生することが挙げられ、これが野外でも起こることが示唆された。